これ読みました
お部屋の整理したら積読の中から出てきた。あまりこう言うミステリ系は読まないほうなのに、いつ買ったのか。
ある殺人放火事件から死刑執行を言い渡された女性について、周囲の人々が語るエピソードから、徐々に浮かび上がる彼女の真実を巡る長編ミステリ。
「読後あまりの衝撃で3日ほど寝込みました…」
「極限の孤独に、心が激震する」
帯のセリフが強い。コピーに惹かれて買ったな、過去の自分。
以下ネタバレ有り
舞台が地元だった
読んですぐ知ってる地名が出てきて、あっこれ地元の話だ、と気づいた。出てくる場所が知ってるとこすぎて、「自分の地元が誰かのトラウマを作った舞台」となってるのはうっすら辛みが増した。
これは読む時にノイズになっちゃったと思う。近すぎた。
幸乃について
このお話は死刑囚である幸乃はなぜこのような凶行に及んだのか、がメインに置かれている。これはあくまで読んだ一個人の感想なんだけど、エピソードを読み進めても、どうしても幸乃の自己中心的な感じが強くて同情出来なかった。
いくら中高が不幸だったとはいえ、慎一の手紙から気持ちを汲み取れていたはずだ。看守の人の気持ちもわかってたはずだ。「もう誰かを信じて裏切られたくない」と言う言葉の中に、自分を麻痺させたいという頑なな決意が伺える。
じゃあ、何が彼女をここまで希死念慮に追い詰めたのか。
周りの境遇もあったけど、1番はおそらく失神する彼女自身の性質だと思う。
興奮すると失神するというこの病気は、多分彼女の死へのハードルを下げたんじゃないか。スーッと寝て天国へ行く。目が覚めなければ良いな、と思ったこともあっただろう。
もちろん、生い立ちが死にたい気持ちへ結びついたのだとは思う。彼女が裏切られた想いを募らせていて、最初の山手時代も含まれるんなら、おそらく。山手以降の経緯は彼女は自ら破滅へ突っ走っている。古本屋の時だってそうだ。断ることもそれまでの彼女ならできたが、おそらく敢えて引き受けた。
自分だけが被害者になることで、別の罪から逃れようとしているように見える。それが山手時代に取り憑かれた、生まれてしまってごめん、みたいな意識なのかも。
これはもはや気質みたいなもので、周りの人間が手を差し伸べていたら救えるものなのかはわからない。救えなかった、と周りが悔やむのもむしろありがた迷惑なんだろう。
ただ、慎一や翔を信じないで、自分を通し付けたのはやはり幸乃の罪だと思う。
自分が誰かの世話になりたくない、生まれてしまってごめん、なくなりたい、と言う心から、罪なき存在、無垢でいたいために、壮大な自殺をするのは、拗れた自己愛に見える。
なんだろう、自分はここまで不幸になってあげたのだから、これでいいでしょ?みたいなわがまま。
満足するのは本人だけで、あまり美しいもんじゃないな、と思うのです。
慎一は早くトラウマ乗り越えてほしい。かわいそすぎる。
極限の孤独な奴にどう向き合うか
ものすごく弱った人間は、救いの手を取ることすら恐怖で、いくら話しかけても、楽な方、死ぬ方へ考えがいってしまう。そして自らを他人の奴隷にして、自我を消そうとする。
都合よくそんな人を消費できるやつは、なんだかんだ社会でうまくやる。敬一や皐月の友達みたいに。彼ら彼女らには罪悪感はほぼない。そしてタチが悪いのは、消費される側の人間がそう言う人に惹かれてしまうことだ。お互いにうまく噛み合ってる。共依存というやつだ。
どういう人が、どのタイミングでどう関われば幸乃を救えたのか?シンプルに、幸乃にお前は幸せになっていいぞ、という思いを抱かせるにはどうすれば良かったのか?
これってなかなか難しい問題だなぁ、と思うのです。
でも、これはまじで地元が一緒だから思うけど幸乃
横浜は地域格差がやばいから 金持ちも貧乏もごっちゃで社会のこと嫌いになるけど
もういっそ地元の友達とか捨ててどっかでリゾートバイトとかして、過去捨てて新しい人間関係作って、少しずつ短期間でいいからアパートのおじいちゃんみたいないろんな人に触れて、まともな感覚を取り戻していくっていうのがなんか真っ当なコースかなって私は思うの
女子の20代なんて全員情緒不安定だから、歳取れば治ることもあるよ
まああくまで私も他人事で言うけど、傍聴席の片隅でなんか言えるなら、そう言うかな…