ヤカの感想

読書とかの感想と、ちょっとの雑記

苦役列車とコンビニ人間

人生のたどりかたがわからない!!!!

私は人間として価値がないんだァァァ!!!!

なんて鬱期に晒されています。

人間ってなんなん

 

これ読みました。

 

 

救われもしなかったが、確かに自分以外の人間も苦しんでるな、と思うことはできたので、一つずつ感想を書いていきたい。てか2冊ともさすが受賞作!って感じで、面白くテーマ性もあってよかった。もっと読みたい芥川賞

 

 

苦役列車の話:

 

作者の西村健太氏、もう死んじゃったけどバラエティとかにも出てたし本人のキャラクターが強烈で、好きでした。

 

主人公の貫多は、15で社会に出て、日雇いの仕事をしている。その日暮らしで怠惰でブサイクで嫉妬深くキレやすく、父親は性犯罪者でとんでもなく孤独、教育と愛情が不足している自己否定の塊である。同い年の大学生の日下部と初めてのお友達になるが、まともになりたい、まともにさせて欲しい、救って欲しいという願いが暴走しすぎててアーッ!!ってなる。そこまで書いちゃうのか。やめてくれ。恥にきくのだ。やめて!やめな貫多!!!やめな!それはお前のパパやママじゃないのだ、お友達は無条件に愛情をくれる存在じゃないのだ…。

てな感じでとにかく赤裸々に書いてくれるのだが、もう恥も恥を書き晒すこの姿勢、本物の捨て人の姿勢がそこにあって、一周回って清貧さを感じる。

書いてる内容は心底汚くゲスいんだけれど、ただのゲス話だと胃もたれしてしまう。

それを和らげてくれるのが、彼の尊敬する私小説家からの影響なのか、軽妙で小洒落た文体。底辺お下劣内容とサラッとした知的な言い回しのないまぜが、読んでてすごく心地よいのだ。ゲスのモツ煮をスパイスカレーくらいに変えている。この文章力がすごい。本物だ。実力で賞とった人だわ…。

内容はアレだが、このセンスと文体は好きすぎる。

もう一つの短編は、腰が痛すぎて動けない、トイレ漏れるがペットボトル近くにあった!ってクソ汚い出だしなんだけど、このタイトルが「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」

素晴らしいやろ。褒めてる。好き。

 

 

 

 

 

 

コンビニ人間の話:

 

主人公の恵子はコンビニで18年バイトしている。人間社会の「ふつう」がわからない恵子にとって、唯一社会での役割がわかるのがコンビニだったのだ。

 

この主人公がロボットみたい。欲がなく、孤独もあまり感じない。けどそれがバレないよう、周りにうまく合わせてる。その理由も、好きな家族を泣かせたら悪いからって感じ。唯一僅かに他者に関心を持ててるのが家族で、それが社会につながるきっかけをなんとか作ってくれてる。良い家族がいなかったら詰んでたな。

 

この作品、主人公の考えに共感できるかがキーな気がする。

 

私は完全肯定派でした。てかこれ、普通の人にはない完全な強みがあると思う。それが周囲には脅威に映っちゃうんじゃないかな。

話中盤で登場するクズみたいな奴との掛け合いがシュールすぎて笑える。このクズみたいなやつを唯一人間として扱ってあげたのが、1番人間らしくない恵子であるって言うのは皮肉が効いててよかった。人間の感情があればこいつなんか絶対ほっとくもん。

 

就職とか結婚とか、社会的地位とか、他人に興味がない人にとっては、自分がその対象になるのは苦痛なんだろう。この人は、同じものの考えをする人たちの中で暮らせればとても幸せだろうな、と思った。日本の中だと、どうもそう言う場所は少ないみたいだ。

 

 

 

 

この話の中に出てくるクズは本当話の中で笑けちゃうくらいクズとして清々しいやつだった。苦役列車の貫多もそうだけど、クズなやつっていうのは小説をうまく転がしてくれる面白い存在やな、リアルでは会いたくないけど。

彼らのトンチンカンな主張の中にも、一生懸命で共感できるところがあるから、笑いつつ愛せるんだな。これも一つの人間の姿なのかもね。