カマキリがいます。
獲物を捕まえました。食べようとしたところ、獲物は言いました。
俺はあなたに食べられます。でも、食べられた後、この俺、この俺のこの意識はどうなりますか?死ぬ前に、教えてください。俺より上のあなたなら、知っているのではありませんか。
完全な弱肉強食の世界で生きてきたカマキリは、プライドが、自分より下位のものの質問に答えられないことを許しませんでした。そしてただのえさが、自分が考えないことを考えてたのが、いやでした。カマキリは絶対にこの質問にカッコよく答えたいと思いました。
お前におしえてやる、けど今ではない。俺が答えを持ってくるまで、お前を食うことを待ってやる。
カマキリが鎌にこめる力を緩めると、(たしかそれは、ちょうちょだったと思います)破れた羽根で獲物はパタパタし、ありがとうございます、お答えお待ちしていますとも、と飛んで行きました。
カマキリは考えます。蜂が通りかかります🐝。
アシナガバチです。カマキリは問います。
おまえ、死んだ獲物がどうなるかしってるか。
ご飯になるよ。
そうじゃなくて、こころだよ。あいつらも、俺たちみたいに考えるだろう。死んだら、そのそれ、それ、はどうなるんだ。
食べられた後に、私になるわけでもない。なんだろう。知らない。
誰が知っているのだろう。
鳥ではないかな。あいつらは私たちを食べるもの。私たちより強いから、私たちよりきっと物知りだ。
そうか。なら鳥に聞きに行く。
食われるよ。
俺は蝶々に答えねばならん。あいつを食べるためにそうしなきゃならん。
蜂はカマキリについて行きました。見晴らしの良い葉っぱの上にカマキリが立っています。蜂が周りを飛ぶと、スズメの巣がありました。スズメのお母さんが、みみずをひなにあげるところでした。
蜂は言いました。
そこの葉っぱに、大きなカマキリがいるよ。
あら、立派なカマキリ!おいしそう!
でも食べないで、あいつの質問に答えてくれ。
餌の頼みなんてきくもんですか。
聞かないと、お前の雛たちが死ぬかもしれないよ。
なぜ。
小さなものを大事にしないと、ばちがあたるのさ。おねがいだよ。カマキリの話を聞いてくれ。
スズメはカマキリの話を聞きましたが、答えられませんでした。
スズメは、自分をよくいじめるカラスなら知っているかもと思いました。カラスは、街の中にポツンとある、木の茂る薄暗いところにいました。
カラスに聞くと、カラスは言いました。
死ぬとこころは石になるんだ。
なぜ石になるの?
しらねぇよ。でも、俺の住む石のある森、あの石は死んだ人間なんだ。(カラスのねぐらは、墓場でした)生き物の中で一番強そうな人間が、自分が死んだら石になってる。だから俺たちも死んだら石か、砂になる。
カラスは自分が物知りだと思わせたいため、よくこじつけを作ります。でもスズメは自分がカラスより弱いと思っているので、カラスがそういうなら、と思い納得しました。
そしてスズメは、得意げにカマキリに言いました。カマキリは蝶々に伝えに行きましたが、蝶々は花畑を飛び、卵を産んで疲れたので死んでいました。アリが運んで行く途中だったので、カマキリは俺の獲物なのに、と怒りました。アリは知らんこっちゃでご飯を運びました。
カマキリと一緒にいた蜂は、スズメの答えを聞き、カマキリのアリへの癇癪を聞いたあと、飛んでいきました。その頃にはあたりは薄青く、ゆっくりと夜がやってくるところでした。
蜂は、ある白い壁の、ちょっとでっぱったところの下の地面の砂つぶをひとつ拾って、お祈りをしました。
そこは風が抜け、敵が来ず、兄弟が次々生まれ、大好きな女王様のもと、みんなが仲良く暮らしたところでした。ある日、蜂はイモムシを見つけました。イモムシは嫌がりましたが、お腹すいた兄弟たちのご飯のためです。イモムシを持って帰ると、巣はありませんでした。びっくりして周りを飛ぶと、地面に巣が落ちていました。そして、きょうだいたちが、その周りで死んでいました。女王様はいませんでした。
蜂は思いました。わたしはいやがるイモムシを殺した。だから、イモムシの神様が怒ったんだ。だからこんな目にあったんだ。
蜂はずっとお祈りの言葉を考えています。今でもまだ考えています。