光文社文庫と新潮版とあり、光文社は現代語に近く簡潔、新潮版は忠実、って感じ。
家に新潮文庫版があるんだけど、光文社のはKindle Unlimitedで3巻まで読めるので、出かける時は光文社で読んでいる。大体光文社3巻くらいまでの感想。
聞いてはいたが、かなり長い。ロシア文学の重厚さと当時の華やかさを堪能できる。読む超濃厚クラシックチョコレートケーキって感じ。
そして人が多い。多いな。そして似てる。デニーゾフとクトゥーゾフ、ドーロホフ、ベズーホフ、どっちがどっち、アンドレイ?ワシーリー伯爵?将軍?ロストフ?クリャーギン?いまどの隊が誰といるの?え…となったり、場面転換すると新たな伯爵、100ページぶりによく似た名前の人が登場する。光文社版だと、久しぶりの登場人物は中訳つけてるほど。
ロシア独特の人名の呼び方が複数個あるのも混乱に拍車をかけ、登場人物556人って書いてあって驚愕した。HUNTER×HUNTERの王位継承戦を軽く超えてきたよトルストイ。
大体自分用に登場人物をまとめるとこんな感じ…か…?
間違ってるかも…
メインの人はあまり名前が似てないのが救い
ピエール…メガネの冴えない純朴な青年。留学帰りで社交界は不慣れ。突然伯爵になった。
ドーロホフ…悪友。頭のネジが外れている。市長と熊を紐で縛り川に投げる。定期的に奇行に走る。サディスト。
ロストフ伯爵…古き良き善良な貴族。
ロストフの子供達:
ソーニャ…頭の良い善良なお嬢さん。でも、よくナターシャの陰に隠れがち。
ナターシャ…多数の男の行動を変える要素を持つ天真爛漫なお嬢さん。
ヴェーラ…妹2人のことを冷めた目で見てる。でも美人なお嬢さん。
ペーチャ…末っ子。
ニコライ…主人公の1人。ナポレオンに憧れて軍に入る。
ボリス…ニコライの友達。家柄は劣るが野心家。顔が良い。
デニーゾフ…ベテラン軍人。素朴。いい人。
クトゥーゾフ…ニコライの上官(たぶん)
ベズーホフ…たしかニコライかピエール、ドーロホフの同年代の友?
エレーヌ…ワシーリーの娘。美しさと社交力がすごいけど、いい人ではない。
アナトール…顔が良いけど、浪費家でいいやつではない。エレーヌの弟。
アンナ・パーブロヴナ…毎晩夜会を開く。そこに参加する人は彼女のおばあちゃんに最初に挨拶しなければいけない。上流社会最強人物の1人。
禿山の人たち
なんとか伯爵…社交界から離れ田舎に住む、高潔で気難しい老人。
アンドレイ…父譲りの高潔さをもつ、優秀な軍人。彼も主人公の1人。
マリヤ…アンドレイの妹。美人ではないが、賢く謙虚。神様を心から信じている。
リーザ…アンドレイの妻。唇の感じが可愛らしいらしい。
マドモワゼル・ブリエンヌ…マリヤの話し相手兼居候みたいな美人。身寄りのないフランス人。
大体ピエール、アンドレイ、ニコライあたりの若者に焦点が当たることが多い。
舞台はナポレオンが攻めてきてる頃の話で、ロシア皇帝やナポレオン、実在のロシア将校も物語に登場する。
群像劇方式なのもあり、その時代に生きる人々の空気を丸ごと書き切っているような感覚がある。読んでる間は当時にタイムスリップしたみたいだ。だからひたすら長いんだけど。
ここからネタバレ有りの感想
登場人物いい点と悪い点を両方持ってる。こんな人いそう〜!ってなる。
ピエールも話の冒頭で善良な青年と書いてあったけど、自信がないから意思決定が上手くできない。そういう人が金を手に入れる、と周りはこうなる、って感じで話が進んでく。
同時進行でニコライはナポレオン進行に対しての戦争に行ったりしてる。嫌じゃないのか?と思うけど、洋々と行ってるように見える。戦争は当たり前にあり、社交界の話題の種にもなる。価値観が違うんだな。
一部の描写は大きなページ数で書かれていて、絵画のモチーフになりそうな場面が多い。叙述的に書いているのが詩的な想像力を逆に高めている。
初戦闘の前の霧の中の静けさとか、すごーく丁寧。霧の中、遠く聞こえる鉄砲の音、馬のいななき、将校が作戦会議してぶつかる中、大砲を守る兵士。トルストイ本人も体験していないであろう、200年以上前のある丘で起こったことを、ここまでリアルに描けるのか。
だからその後のニコライのテンションの高さ、敗走、無意識の傲慢さ、同僚への強がり、皇帝への憧れとかが、リアルな感情だと思える。同じ境遇を体験したことなどないのに、その時代にいた、その時の人の気持ちになれる。すごい。
なんか言いたいことまだあるけど、まとまらないので、とりあえずここまでにする。
おわり。